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牡蠣の耳吊り養殖

美しい海と愛情で育んだ牡蠣の物語 HISTORY

美しい若松瀬戸の海

海産物の宝庫「五島列島」

世界的にも有数な漁場として知られる東シナ海に浮かぶ「五島列島」。

周囲の海域はちょうど暖流と寒流の潮目に位置し、また潮の流れも速いことから身が締まった多くの魚が獲れることで有名である。

その五島列島にある「中通島」と「若松島」の間に、特に潮の流れが早い、風光明媚な「若松瀬戸」がこの物語の舞台だ。

「若松瀬戸」は、「溺れ谷(沈水海岸)」が複雑に入り組んでおり、古くからその地形を生かした養殖業が盛んな地域である。

牡蠣養殖のはじまり

山田大さん(40)の祖父である山田音吉さんもその一人で、当初は林業に従事していたが、この恵まれた地形を生かしたいと「ブリ養殖」を始めたのが、今の養殖事業のスタートである。

現在、真牡蠣と岩牡蠣の養殖を中心に行っている株式会社マルオトは、音吉さんの息子である、社長の山田進さん(66)、妻のまり子さん(66)、その息子の大(ひろし)さんとで営んでおり、従業員8名を抱える中小企業である。

当時は、山田音水産という名称で祖父が始めた養殖事業であったが、父の代になってからは、ヒラメの養殖に切り替えることとなる。ところが、外国産のヒラメが国内に流通し始めたことでヒラメの魚価(ぎょか)が下落。またその頃、国内の養殖魚全般の需要が低迷し、業績も大きな影響を受けることとなった。

 日々、新たな養殖を模索していた進さんであったが、平成19年、牡蠣の試験養殖の話が舞い込む。

牡蠣は一般的に、筏を洋上に浮かべて養殖するので、波が穏やかな場所でないとうまく生育できない。その点、「若松瀬戸」は入り組んだ「溺れ谷」のおかげで、環境としては適しているとみた進さんは牡蠣の試験養殖に着手。平成21年に牡蠣養殖業として株式会社マルオトを創業することとなった。

株式会社マルオト山田進社長

株式会社マルオト山田進社長

牡蠣の養殖場

 牡蠣の養殖場

牡蠣ブームとその終焉

その頃、世間は、いわゆる「オイスターバー」が流行し始め時でもあった。

色んな産地の牡蠣が楽しめるとして、全国的に人気があった「オイスターバー」であったが、そのような中、幸いにもマルオトの牡蠣もその流行に乗ることができた。

「牡蠣を作っただけお金に変わった」と言われるほどのブームだったが、そのブームも長くは続かなかったという。

創業後、3年ほどはブームの恩恵を受けることができたが、その後、折からのノロウィルスの流行により全国の牡蠣業者が大打撃を受けることとなる。

このインタビューの際、その当時を振り返った山田大さんは「ここからが私たちの本当の挑戦でした」と語る。

当時を振り返る山田大さん

当時を振り返る山田大さん

重なるクレームと研究の日々

オイスターバーブームが盛り上がったおかげで、消費者は「美味しい牡蠣の産地」を理解し始め、そのブームが終息し、次に待ち構えていたのが、養殖業者の「選別」であった。

会社に取引業者からのシビアな意見やクレームがたくさん届くようになったのである。

それからは「研究の日々だった」と語る山田さん。

全国の牡蠣を取り寄せ、また産地を巡り、長年研究を重ねた結果、辿り着いたのが「耳吊り養殖」であった。

牡蠣は、養殖されている海の環境に影響を受けやすいとされるが、五島列島の「若松瀬戸」の海は透明度が高いことで知られている。

透明度が高い、いわゆる「綺麗な海」は、実は、牡蠣の栄養分であるプランクトンが少なく、牡蠣の養殖に不利な環境なのだそうだ。

研究の日々だったと語る

研究の日々だったと語る

導き出した「答え」

そこで、まず行ったのが「密度の調整」であった。栄養分を行き渡らせるために、牡蠣同士が密集しないよう工夫を重ねたのであった。

まず真牡蠣は、一般的な「カゴ網養殖」を採用しているが、カゴに入れる真牡蠣の量を最大で4分の1まで抑えることで、ムラなく栄養が行き届くようする。その分、「若松瀬戸」は水深が深く、潮通しが良いため、カゴを何段も深く吊り下げ、生産量も確保しつつも、栄養分を行き渡らせる方法を開発した。

真牡蠣の「カゴ網養殖」

真牡蠣の「カゴ網養殖」

岩牡蠣の「耳吊り養殖」

岩牡蠣の「耳吊り養殖」

また岩牡蠣は、元々ホタテ貝の養殖で使われる手法である「耳吊り養殖」を採り入れた。これは、貝の蝶番(ちょうつがい)に一つ一つ手作業で穴を開け、等間隔でロープに吊るし直す方法で、大変手間隙(てまひま)がかかる養殖法であるが、これにより、牡蠣が養分を摂取しやすくなり、身が安定するようになった。

愛情と美しい海が育んだ自慢の牡蠣に

このような独自の養殖方法を編み出したことで、他の有名産地に引けを取らない牡蠣を育て上げることに成功したのだ。

さらには、このような研究や手間を経たことにより、水揚げ時期のコントロールにまで至ることもできた。岩牡蠣は一般的には夏場の出荷となるが、なんと2月頃には出荷が可能になったのだ。

これにより、全国でも類を見ない同時期に「真牡蠣と岩牡蠣の食べ比べ」も可能となったのである。

透明度の高い若松瀬戸の海

透明度が高い若松瀬戸の海

癖がない味わいの「真牡蠣」

癖がない味わいの「真牡蠣」

今では、この若松瀬戸で育った牡蠣は貝柱がシャキシャキとした食感と、癖のないクリアな味が最大の特徴となった。いわゆる、独特の磯臭さがないことから牡蠣が苦手な方でも好んで食べて頂いており、全国にファンが広がったという。

昨今では、新型コロナの影響により、飲食店などへの出荷量が激減したが、これまでのチャレンジスピリッツで新たな出荷先も開拓することもでき、さらにご縁が広がったという。

「手間と愛情をかけて育てています!子どもと同じです!」と語る山田さん。

深い愛情と五島列島の美しい海が育んだ牡蠣。

是非皆様にご賞味頂きたい。

身が大きく濃厚な味わいの「岩牡蠣」

身が大きく濃厚な味わいの「岩牡蠣」

「子どものように愛情をかける!」と山田大さん

「子どものように愛情をかける!」と山田大さん

真牡蠣と岩牡蠣の食べ比べができるのはここだけ!

真牡蠣と岩牡蠣の食べ比べができるのはここだけ!

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